いまさら聞けない?資金調達の種類と選び方(前編)

資金調達とは

一般的に企業が事業運営のために必要な資金(現金)を調達することを資金調達と呼びます。
事業運営に必要な資金は「運転資金」と「設備資金」の2種類があり、それぞれ

運転資金:事業運営上の日常的な支払い(仕入、人件費、家賃の支払いなど)に必要な資金
設備資金:新しい機械を導入したり、新店舗を出店するなど何らかの投資のために必要な資金

と整理されます。
これらの資金を何らかの方法で外部から調達することを一般的に資金調達と呼びます。

資金調達の種類

一般的な中小企業における資金調達には大きく分けて「出資」と「借入」があり、それぞれエクイティファイナンス、デットファイナンスと呼ばれます。

出資=エクイティファイナンス

エクイティファイナンスは株式の発行等により「会社に出資をしてもらう」ことで資金を調達します。
出資をしてもらうので基本的には返済の義務がない資金になります。

借入=デットファイナンス

デットファイナンスは、金融機関等から「お金を借りる」ことで資金を調達します。
借入で調達するので、金利の支払いおよび返済の義務がある資金となります。
中小企業における資金調達の大半はこのデットファイナンスとなります。

このほかに土地や資産を売却することで現金化する「アセットファイナンス」の手法もあります。

資金調達の特徴と選び方

エクイティファイナンスの特徴

「関係者」が増え「カネもクチも出される」可能性あり

エクイティファイナンスを行った場合には、株式を他人に買ってもらうことになるので、会社の所有者が増えるということになります。種類株(議決権を有しない株など)の発行により、経営に口出しをしない形もあります(いわゆる「メザニンファイナンス」に分類されます)が、その場合は「配当」が優先的になされるなどの条件がつくことがあります。

エクイティファイナンスは、返済の義務がない代わりに、会社の所有者(ステークホルダー)が増え、その対応や配当などが発生します。
厳密には資金調達にかかるコストを計算する必要がありますが「カネもクチも出される」ことになるので、経済的な負担の他、株主の対応という点でも「お金も手間もかかる」資金調達の方法と言われています。

シナジーが見込める場合もある

事業会社から出資を受け、資本業務提携をすることで、出資元の設備や顧客基盤などの経営資源などを活用して事業を拡大・安定させるという手法も取られることもあります。
事業再生の分野では、ファンドが株主となり、資金を供給したり他社との提携などを推進することで再生とその後の成長を図っていくことも多いです。

将来設計が重要

出資を受けるということについては、オーナーとしてどの程度の主導権を残すのか、資本を受け入れた後にどのような事業展開をしていくのか、といった「将来設計」が重要となります。
いわゆるスタートアップ企業の場合は、IPO(上場)や売却といった出口戦略(EXIT)を前提に他者からのエクイティファイナンスを実施するのが一般的です。

デットファイナンスの特徴

最も一般的な選択肢は金融機関からの融資

一般的な中小企業のほとんどの資金調達はデットファイナンスです。
なかでも日本政策金融公庫、信用金庫、地方銀行からの融資による調達が大半です。

ビジネスローンやファクタリング(厳密にはアセットファイナンスに分類されます)も選択肢としてはありますが、金利や手数料の負担が相当大きいため、メインの選択肢とはなり得ません。

一般的な金融機関からの融資によるデットファイナンスは用途に応じて5年~10年(内容や保全状況によってより長期の場合もあり)程度の長期の借入、1年以内の短期借入(借り換えを繰り返して結果的に長期借入になっているケースもある)などが一般的です。

※ファクタアリング:売掛債権を買い取ってもらうことで資金調達をする方法(買取手数料がかかる)

「ご利用は計画的に」する必要がある

借入は当然ながら返済していくことが求められますので「返済余力があるのか」ということが貸し手から見ると非常に大切になってきます。
経営が厳しくなってから融資のお願いをしても「返済余力がない」とみなされ、借りることが難しくなることが多いです。
金融機関から融資を受けるには、こちらがどのような計画で返済を考えているのかということをきちんと説明できるようにしておく必要があります。
また、最近は必ずしも必要ではありませんが、経営者保証を求められたり、経営者の自宅を抵当に入れることで融資を受けると、万が一返済ができなくなってしまった場合は経営者本人の生活に大きな影響が出る場合があります。

少し長くなってしまったので続きは後編をご覧ください。